助成対象詳細
Details
企画書・概要
Abstract of Project Proposal
そこで、理美容師業務の中でのヘアカット困難事例や実際の対応状況など現状について調査することで理由を探り、どのような知識とサポートがあれば受け入れ可能となるのかを検証するため、全国の理美容師養成施設教員や開業・勤務理美容師へのアンケート調査を実施する。当団体の「スマイルカット」と題する全国的な啓発活動や過去の調査内容と合わせ、発達障害に関する基礎知識と理美容技術に関するテキストを作成し、全国の理美容師に普及する活動に繋げることを目標とする。
全国の理美容師が障害特性に配慮したサービスを提供することで、理美容の側面からの「心のバリアフリー」社会の実現をめざす。発達障害者が笑顔でヘアカットできる「スマイルカット」を契機として「合理的配慮」の名の下、あらゆる生活サービスが提供されるコミュニティを早期に実現したい。
実施したプロジェクト内容と方法
Describe the implemented project and the method used
発達障害児のヘアカットの困難さには、理美容師の発達障害の認知・理解・意識が低い背景から、理美容師の受け入れ状態が整っていないことに課題があることを明らかにするため、本調査では理美容師に対象を絞り「理美容師側の課題」の解決に向けた事業を検討すべく、以下の調査を実施した。
①調査対象:理美容師・理美容室経営者・育成専門学校生の三者
保護者の調査は2018年に実施済みであることから、本調査の対象は「理美容師」とした。
また、多くの美理容師がフリーランスではなく店舗で働く形態のため個人の意思のみでは対応が難しい社会的な構造から「経営者」と、理美容師育成段階での啓発的な取組も重要なことから「専門学校生」も対象とした。
②調査方法:理美容師・理美容室経営者・育成専門学校へのアンケート調査
A)理美容師 →Googleフォームを用いたアンケート調査
B)専門学校生 →Googleフォームを用いたアンケート調査
C)経営者 →オンラインによるヒアリング調査
③調査実施機関:NPO法人そらいろプロジェクト京都、社会福祉法人南山城学園による共同実施
④調査対象エリア
A)理美容師 →南山城学園の主要事業エリアである城陽市・宇治市を主として実施
B)専門学校生 →委員が校長を務める「京都美容専門学校」の協力を得て実施
C)経営者 →京都美容専門学校校長を務める委員のネットワークを活かして依頼、実施
⑤調査実施期間:2021年7月〜11月
⑥:調査準備
多くの方にアンケート調査に応えていただくために事前準備として、2021年7月にGoogle検索によりピックアップされた城陽・宇治市内の理美容室312店舗(理容室55店舗、美容室257店舗)と、機縁法により依頼した京都市内の理美容室16ヶ所、長岡京市1ヶ所の合計329店舗に「アンケート調査依頼書」を送付した。
⑦調査回答数
A)理美容師 →回答数114件
B)専門学校生 →回答数121件
C)経営者 →ヒアリング10名
⑧調査に付随する取り組み:以下の成果物を作成
・調査報告書作成「理美容からのバリアフリー社会の構築 発達障害児・者の現状と課題調査」
・リーフレット作成「ヘアカットが苦手な子供たちのことをご存知ですか?まちの理美容師さんへ」
・動画を作成し、動画配信によるオンライン講習会
助成期間終了時点での成果と今後期待される波及効果等
Describe the results at the end of the grant period and expected ripple effects
1.調査活動の成果
「理美容師」「専門学校生」「経営者」の3者における「発達障害児のヘアカット」が普及し難い要因が分かった。
【理美容師】
・言葉の認知度は高いが、出会い・学び・情報取得の機会が少なく、関心度も高くない
・技術や工夫をしながらヘアカットを進めている団体があることはほぼ知られていない
・学校で学機会はなく、支援している福祉・教育関係者から情報を聞く機会もほとんどない
・育成段階で学ぶ必要がある意見は全体の6割、教育や福祉との連携が必要である意見は4割程度
・ヘアカットの不安は「ハサミがあたると危険」「じっとしていられない」「通常よりも長い時間がかかり営業に影響」の3つが上位を占め、ヘアカットの障壁となることは「コミュニケーションが難しい」「接し方がわからない」「技術の習得に必要なトレーニング・研修を受ける機会がない」の3つが上位を占めた
・ヘアカットができる理美容師を増やすためには学習機会の確保が重要と示された
・機会や研修機会を持てれば積極的に取り組みたい意見が6割程度であった
【専門学校生】
・言葉の認知度は比較的高いが、出会い・学び・情報取得の機会が少なく、関心度も高いとはいえない
・技術や工夫があってもスムーズに切れるイメージが湧かないためか、わからないという回答が多かった
・技術や工夫をしながらヘアカットを進めている団体があることは、ほぼ知られていなかった
・学校で学ぶ機会はなく、支援している福祉・教育関係者から情報を聞く機会もほとんどない
・育成段階で学ぶ必要がある意見は全体の7割程度、教育や福祉との連携が必要である意見も7割程度
・ヘアカットの不安は「ハサミがあたると危険」「じっとしていられない」「接し方がわからない」の3つが上位を占め、ヘアカットの障壁となることは「接し方がわからない」「トレーニング・研修を受ける機会がない」「コミュニケーションが難しい」の3つが上位を占めた
・ヘアカットができる理美容師を増やすためには学習機会の確保が重要と示された
・機会があったり、研修機会が持てれば積極的に取り組みたい意見が8割程度に上った
【経営者】
・「解消すべき社会全体の課題」であり、理美容師もインクルーシブな社会像を目指したいという思いを持っている
・「発達障害に対するわからなさ」もあり、そもそも「当事者、家族との距離の遠さ」があることも課題
・「専門機関との距離の遠さ」もあり、理美容の世界と、福祉・教育・医療などの専門機関との架橋も足りていない
・当事者と理美容室が繋がる方法は「現状、繋がる方法は口コミ」が現実
・「理美容師には誰でもお客様だというプロの姿勢」でどのお店でも受け入れ、「国家資格取得後の理美容師の研鑽こそ重要」で、かつ理美容室でヘアカットするには「アセスメントが大事」
・合理的配慮を要する人たちについて国家資格養成課程に組み入れた学習機会を設け、専門性を担保していく取り組みに向かうためには「国家資格養成課程への導入による専門性の深化」が必要
・この活動を特別視し「美談にしたがる福祉関係者」の見識不足も問題
2.事業化または今後の展開に向けた波及効果
①発達障害の知識を習得するための教材として作成したリーフレットを活用することで、理解啓発活動をさらに促進することができる
②発達障害児のヘアカット技術を学びたいときに学べる教材開発として作成した啓発動画を、オンライン講座で配信することで、京都だけでなく全国の理美容師が見ることができる波及効果
③また、啓発動画は理美容師育成段階で活用できる教材として専門学校向けにオンライン講習会などで活用することができる
⇒事業規模・財源規模は京都から全国、理美容業界へ展開していきたい。財源は民間助成金や国の補助金等を活用していきたい
成果物
Projects Outputs
- リーフレット「ヘアカットが苦手な子ども達のことをご存知ですか? 〜まちの理美容師さんへ〜」(D20-LR-0025)
広報誌 JOINT
Joint