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助成対象詳細

Details

2017 研究助成プログラム Research Grant Program   [ (B)個人研究助成   ]

他者の感性の内在的な理解と表現―ペルーのモダンガストロノミーの文化人類学的研究―
The Immanent Comprehension and the Expression of the Sensibilities of the Others: An cultural anthropological approach to Peruvian modern gastronomy

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

物事を感じ取る仕方が西洋化していく傾向、すなわち感性の植民地化が現在も世界中で続いており、それが結果として非西洋的感性やそれに基づいて作られたもの無理解や忘却をもたらしている。そこで、自身にとって不明であるところの他者の感性を、その他者のやり方で理解し、表現する方法を明らかにすることに申請者は社会的価値を見出し、それを本プロジェクトの目的とする。
 具体的には、ペルーのモダンガストロノミーレストラン、特にペルー国内で多様な食文化を生きる人々から学ぶことを通してメニューや調理法の開発、素材の探究を行うチームに対して文化人類学的フィールドワークを行い、どのように他者の感性の内在的な理解と表現がなされるのかを解明する。
 申請者は、学術的には感覚が関わる人類学の諸領域や、他者の理解と表現をその基本とする文化人類学の方法論、食文化研究において食文化をより深く理解するための方法論への貢献をなすことを目指す。同時に、料理人や食産業に関する人々にその活動に貢献しうる知見を還元することや、一般の人々に他者の感性を理解し、表現する方法を広げていくことを望んでいる。
 The tendency that people come to sense as western do, that is, the colonization of sensibility continues all over the world today, which resulted in the lack of understanding and the forgetting of non-Western sensibilities and those made based on them. Then, to clarify a method to comprehend the sensibility of others which are not well known as they do and to express it has a social value and it is the purpose of this project.
 I plan to do fieldwork cultural-anthropologically in a modern gastronomy restaurant in Peru, especially in the team there which creates dishes and cooking methods and investigate new materials. Through that research, clarified is the process that the cooks learn to understand immanently and express the sensibilities of others.
 The result of this project will academically contribute to disciplines of anthropology related to senses, and to cultural anthropology generally, which bases itself on comprehending and representing others, and to food culture studies by proposing the method for understanding food cultures deeper. On the other hand, it will bring advises to cooks and to those related to the food industry, and will spread to ordinary people the way of telling the sensibility of others immanently.

実施報告書・概要

Summary of Final Report

本プロジェクトは、ペルーにおいて、モダンガストロノミーレストランを中心に、レストランや家庭での料理や食材の生産にまつわる活動に対する文化人類学的フィールドワークを行うことで、モダンガストロノミーレストランでの料理の創作を通して、他者の感性が内在的に理解され、表現されていく過程を明らかにしようとした。
本研究が最も重点的に調査を行ったのは、ペルーのモダンガストロノミーレストランであり、それぞれにペルーの自然や文化を表現するような独創的な料理を目指しているミル・セントロ(クスコ)、セントラール(リマ)、アストリッド・イ・ガストン(リマ)である。これらのレストランでは、料理人あるいはレストランの調査部門の一員としてフィールドワークを行い、日々の調理や料理の試作、食材の調査に携わった。料理の創作について、これらの調査から明らかになったのは、まず創作の出発が、多くの場合は食材から出発して行われることである。他者の感性が影響を持っていたのは、ペルーの伝統的な料理法を現地の人やその料理法が根付く地域出身の料理人から教わったり、他のレストランの料理人の技法をSNSを通して学んだりといったように、主に料理の具体的な技法を自分たちの料理に取り入れようとする機会であった。料理法を試し、自分のものとしていく中で、それらの料理法自体が、料理人がそれまで意識していなかった、ものや感覚、その連関に注意を向けることを必要していた。一方で、これらのレストランのSNSなどを通じて他者のイメージが喚起される場合、それは主に食材や調味料をもたらす生産者としてであり、他者はそれらのものと常に対になって提示されていた。またレストランが置かれた土地の自然や文化を表現しようという志向やその方法自体は、国際的なモダンガストロノミーの潮流と軌を一にしていた。
本プロジェクトでは、より一般的なペルー料理のレストランや、様々な階級の一般家庭、あるいは、モダンガストロノミーレストランの中でもスタッフ向けの料理の調理の過程に対しても、フィールドワークやインタビューを幅広く行った。そうした調査を通して、一般のペルー料理の文化がモダンガストロノミーレストランのような場所の創作における食材や味付けの選択においても基盤になっていることが明らかになった。
上記のフィールドワークによって得られた知見については、調査対象となったレストラン、在ペルー日本人の会合で口頭発表を行い、プロジェクトの成果を社会に発信することに努めた。

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2017 研究助成プログラム Research Grant Program   【(B)個人研究助成  】
助成番号(Grant Number)
D17-R-0650
題目(Project Title)
他者の感性の内在的な理解と表現―ペルーのモダンガストロノミーの文化人類学的研究―
The Immanent Comprehension and the Expression of the Sensibilities of the Others: An cultural anthropological approach to Peruvian modern gastronomy
代表者名(Representative)
藤田 周 / Shu Fujita
代表者所属(Organization)
東京大学大学院総合文化研究科
Graduate School of Arts and Sciences, The University of Tokyo
助成金額(Grant Amount)
1,000,000
リンク(Link)
活動地域(Area)