助成対象詳細
Details
2017 研究助成プログラム Research Grant Program [ (A)共同研究助成 ]
南海トラフ巨大地震の防災減災に向けた伝統的神社空間のもつ価値構造の再構築
A Study on Value Structure of Shrine Space for the Disaster Risk Reduction on Nankai Megathrust Earthquake
A Study on Value Structure of Shrine Space for the Disaster Risk Reduction on Nankai Megathrust Earthquake
企画書・概要
Abstract of Project Proposal
本研究では、このような経緯をふまえ、大規模自然災害のリスクを回避するうえで神社空間のもつ新たな価値を、神社関係者との連携のもとに構築し、現代社会におけるその有用性を提示する。本研究における「新たな価値の創出」とは、日本の伝統的な幸福概念である「無病息災」に現代的意味を与えることである。この目的を達成するために和歌山、徳島、淡路の3つのフィールドにおける神社空間についての文献調査およびヒアリング調査を行い、さらにGISを用いて神社の立地特性を分析するとともに、和歌山県の伊達神社をモデルとして防災拠点を整備する社会実験を行い、その成果を社会に発信する。
In this project, we try to build a new value structure of the shrine space in order to avoid the risk of large‐scale natural disaster. In addition, we presents the usefulness of its value structure in modern society. As a research method, we carry out a theoretical consideration about shrine space in public policy, through literature survey and interview. And next step is to analyze the space characteristics of the shrine in Wakayama, Tokushima and Awaji by using GIS. In addition, an important feature of this project is to conduct the social experiment concerning disaster prevention at Idate Shrine as a model case.
The new value structure model of shrine space is proposed by integrating the result of theoretical consideration and social experiment as described above. This value structure model gives modern meaning to "Mubyou‐Sokusai" which is the concept of Japanese traditional happiness. In order to achieve this goal, this project will be carried out based on collaboration with various researchers and experts.
実施報告書・概要
Summary of Final Report
【実施報告書】http://toyotafound.or.jp/research/2017/data/TomokiTakada_final_repot_D17-R-0635.pdf
本プロジェクトの目的は、大規模自然災害における地域防災の取り組みのなかで「神社空間」の新たな位置づけを検討することである。そのために、本研究では、和歌山市・伊達( いたて) 神社において社会実験を展開し、防災コミュニティ形成の実践モデルを提示した。
伊達神社の位置する有功地区は、地震、津波、河川氾濫、土石流、斜面崩壊など多様な災害リスクにさらされている地域である。地域防災上の課題としては、地域住民が種々の災害リスクのポテンシャルを認識していない、地域内で実効性のある避難計画が周知されていない、古くからの集落と新興住宅街の住民が交流できていない、といった点があげられる。
これらの課題を解決するために、伊達神社において、氏子やその他の地域住民と神職、絵地図アーティスト、学識経験者がワークショップとフィールドワークを繰り返し、地域内の史跡名所を巡ることでハザードエリアが把握できる「無病息災マップ」を作成するプロジェクトを展開した。マップづくりのプロジェクトミーティングを重ねるなかで、有功地区の神社・寺院やお堂などの配置が、ちょうど河川氾濫時の浸水想定区域の境界上に位置することがわかった。また、土石流や斜面崩壊のリスクが高いスポットは、紀ノ川への眺望が開けている場所である。そこで、それらの史跡・名所や眺望点を結ぶウォーキングコースを設定し、そこを歩くことが自動的に地域のリスクの高いエリアを認識する契機となるようにした。
無病息災マップは、名所巡りにより地域の歴史的文化的背景を知るとともに、地域のランドスケープを体感しながら歩くことで健康を増進しながらも、リスクポテンシャルの高いエリアを同時に把握するという複合的な価値を組み込んだマップである。人びとは神社で、無病息災を祈願する。無病息災という概念は、健康で安全に暮らすことそのものが一つの幸福の形であるという考えにもとづいている。無病息災マップは、そのような伝統的な日本の幸福概念を防災コミュニティの形成という現代的課題にもとづいて具体化したツールであるといえる。
さらにこの無病息災マップは単なる地図としてではなく、日常的に別の用途として使用しながら、地図としても活用できるクリアホルダーとして配布された。ベースマップが描かれたクリアファイルに、浸水想定区域、斜面崩壊の危険個所、緊急避難場所と避難所、史跡名所、ウォーキングルートなどの情報が描かれた付属のフィルムシートを重ねることで、地域住民が自らの関心にもとづいて多様な情報を読み取ることができるデザインになっている。今後は、伊達神社において毎年6月30日に実施している夏越の大祓において、無病息災マップを参拝者に配布し、その趣旨を説明するとともに、実際にウォーキングを実施する。
広報誌 JOINT
Joint
プロジェクト情報
Project
プログラム名(Program)
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2017 研究助成プログラム Research Grant Program
【(A)共同研究助成
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助成番号(Grant Number)
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D17-R-0635
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題目(Project Title)
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南海トラフ巨大地震の防災減災に向けた伝統的神社空間のもつ価値構造の再構築
A Study on Value Structure of Shrine Space for the Disaster Risk Reduction on Nankai Megathrust Earthquake |
代表者名(Representative)
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高田 知紀 / Tomoki Takada
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代表者所属(Organization)
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兵庫県立大学 自然・環境科学研究所
Public University Corporation of the University of Hyogo, Institute of Natural and Environmental Sciences |
助成金額(Grant Amount)
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¥5,200,000
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リンク(Link)
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活動地域(Area)
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