助成対象詳細
Details
2017 研究助成プログラム Research Grant Program [ (B)個人研究助成 ]
資本主義フロンティア周縁におけるコミュニティ再生―モザンビークにおける強制移住に関する民族誌的事例研究―
Remaking of Communities at the Edge of Capitalist Frontiers: An ethnographic case study of displacement in Mozambique
Remaking of Communities at the Edge of Capitalist Frontiers: An ethnographic case study of displacement in Mozambique
企画書・概要
Abstract of Project Proposal
実施報告書・概要
Summary of Final Report
【実施報告書】http://toyotafound.or.jp/research/2017/data/KeiOtsuki_final_repot_D17-R-0498.pdf
研究目的
本研究の主な目的は、海外投資による土地収奪および強制移住により形成された再定住コミュニティが、いかに新たなコミュニティとして再生するかを明らかにすることである。世界中で年間2千万人が開発や環境プロジェクトによる強制移住を経験している。本研究は、強制移住させられた人々がどのようにコミュニティを再生し、誰が具体的にその責任を負うのかを調べることにより、環境正義の在り方を問う。
研究方法
本研究では、モザンビーク南西部に位置するリンポポ国立公園を事例研究の対象とする。リンポポ国立公園は、ヨーロッパ資本を受けて設立された南アフリカの平和公園財団によって、世界最貧国の一つであるモザンビークにおける観光開発を推進するために2001年に作られた。しかしモザンビークは1975年のポルトガルからの独立以来1992年まで内戦状態であったため、国内の野生動物が絶滅に近い状態であった。そこで、南アフリカのクルーガー国立公園から大型の野生動物が移送され、それに伴い、9つのコミュニティからなる計7000人が公園外へ再定住させられることとなった。2020年までに3つのコミュニティが再定住しており、本研究はそのうちの2つのコミュニティにおいて、2018年6月および11月、2019年2月および7月―8月と4回、民族誌的フィールドワークおよび公園・政府関係者からの聞き取り調査を行った。
研究結果
再定住コミュニティおよび公園経営側が直面する第一の課題として、インフラの問題が明らかになったが、この問題がいかに体系的に研究されていないかも明らかになった。コミュニティは再定住に向けた交渉の過程で、コンクリート造りの家、水道、電気などの基本インフラ、そして生計活動再生のための灌漑インフラの整備を約束されていた。しかし、実際には約束されたインフラは不十分か皆無に等しい状態であり、再定住民の大きな不満のもととなっていた。再定住後7年たってもインフラ整備は不十分なままであり、2019年3月にやっと再定住先の郡政府が水道、道路網の完備を約束したところであった。この状況がなぜ起こるのか文献調査なども交えてさらに調べたところ、世界的な新自由主義体制の影響をもろにうけた政府の能力の低下、さまざまな主体が再定住のプロセスにかかわることによる責任の所在の曖昧さが根底にあることが分かった。また、自然保護に特化した公園経営では、公園外のインフラ整備に関する専門知識が不足しており、再定住コミュニティの生計回復とインフラ整備に向けた体制を整える重要性が明らかになった。
成果物
国際誌への投稿論文3本 (Development in Practice, Environment and Planning E, Antipode), 国際出版社(Edward Elgar)の書籍の一章、英語とポルトガルによる政策提言、ブログ記事。
広報誌 JOINT
Joint
プロジェクト情報
Project
プログラム名(Program)
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2017 研究助成プログラム Research Grant Program
【(B)個人研究助成
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助成番号(Grant Number)
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D17-R-0498
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題目(Project Title)
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資本主義フロンティア周縁におけるコミュニティ再生―モザンビークにおける強制移住に関する民族誌的事例研究―
Remaking of Communities at the Edge of Capitalist Frontiers: An ethnographic case study of displacement in Mozambique |
代表者名(Representative)
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大築 圭 / Kei Otsuki
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代表者所属(Organization)
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ユトレヒト大学地球科学部
Faculty of Geosciences, Utrecht University |
助成金額(Grant Amount)
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¥1,500,000
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リンク(Link)
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活動地域(Area)
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