助成対象詳細
Details
企画書・概要
Abstract of Project Proposal
集会所等の共用スペースは、全住民共用の①話し合う場(会議機能)、②楽しめる場(交流・親睦機能)、③外部者と交渉をもつ場(面談・応接室的機能)といった多様な機能を持つ「場」であり、フォーマル・インフォーマル問わず、多くの用途がある。一方、かかる多様な機能とその有用性は、住民の多くにとって明確に意識化されていないため、仮設団地との比較で経済的負担など負の側面に目が向くことで活かしきれず、その有用性が享受できていない。また、従来「お客様」であった住民が、ゼロからの運営者となることは、住民間のコンフリクトに巻き込まれるのではないかといった不安から、抵抗を感じている面もある。そこで、集会所等の共有スペースを先ず使ってみることから、多様な「場」としての機能を意識化・共有化し、経済的負担よりも有用性が上回ることへの気付きの機会を提供する。同時に菜園会など住民によるサークル活動についても、運営スタイルの確立を目指す。なお、プログラムを通じて、集会所等共用スペース運営による住民同士の協働プロセス・エッセンスを体得できるものとする。また、アドバイザーとしては、当該地区における先行事例実践者を予定している。
実施報告書・概要
Summary of Final Report
1.(1)プロジェクト実施地域
- 宮城県石巻市蛇田字新立野
- 宮城県石巻市蛇田字新西前沼
(2)プロジェクト実施災害公営住宅
- 市営新立野第一復興公営住宅A~H 全228戸(他周辺戸建住宅) 65歳以上約半数
- 市営新西前沼第二復興公営住宅 全120戸 65歳以上約3割
(3)地域特徴
両者共に、被災を機に造成された地域。自治会形成が始まったばかり。(2018年度現在新蛇田地区は2つの自治会発足、地域の約半分をカバー。新西前沼地区は、自治会形成のアナウンスがなされる)
2.災害公営住宅団地敷地内にある「集会所」を、住民が「集まり、会う、場所」という文字通りに活用するプロジェクトであり、入居時期が異なる隣接地域災害公営住宅、2か所の集会所で実施となった。
- 一つ目は、「新立野第一集会所」である。住民によるサポーターやサークルの方と相談し、毎週水曜日の午前と午後、「みんなの喫茶」という題目でコミュニティーカフェを実施。サポーターを中心に、新立野第一集会所での活動や催し、セミナーなどの要望をまとめ、実現していくサポートを行う場となった。「七夕会」「パソコンセミナー」「健康体操」「クリスマス飾りを作る会」「集会所利用者交流会」、NPO法人にじいろクレヨン主催「クリスマス会」や「バレンタイン企画」などの会場ともなる。
- 二つ目は、「新西前沼第二集会所」である。2年程後発である市営新西前沼第二復興公営住宅団地会班長を中心に、月に1~2回、お茶会を開催。他、東北大学学生ボランティアと基礎ゼミによる活動をコーディネートする。住民全体清掃会を皮切りに、12月には、住民と大学生、地域サークルによる「クリスマス会」を開催した。他、サークル活動補助は社会福祉協議会が受け持ち、集会所は週に一度のペースで利用されるようになった。
3.新立野、新西前沼のプロジェクト共に、「集会所を〇〇で利用する」の〇〇を主体として考え、結果、自分の住んでいる地区のことを話し合うことになった。そのことは、「現状の確認」となり、不安、不満を吐き出す場にもなった。これらを解決するための方法を、当団体と一緒に動くことで経験し、不安、不満のままにするのではなく、解決する「方法」を探すこと、相談することを体験することになった。集会所を利用するということは、「経費はどうする」「誰が鍵を開ける」などの課題を解決する「目的」を共有することが必要で、自主的に解決していく経験を、この一年でできた。それが、他の問題に関して解決するヒントになり、問題を問題と認識できることが、コミュニティー形成の一歩となり、成果と言える。