助成対象詳細
Details
企画書・概要
Abstract of Project Proposal
実施報告書・概要
Summary of Final Report
1.南三陸町では2017年度中に8団地738戸の復興公営住宅の整備が完了、入居も終わった。入居者自治会については、入居が遅く規模の大きな2団地(志津川東の西=169戸、志津川中央=147戸)において想定より時間がかかったものの、全ての団地について設立された。ただ、自治会の多くが共益費の集金や団地の共通費用(共用部の光熱水費等)の支払といった最低限の機能を有する形態(都市部のマンション管理組合と似ている)を取っており、お茶会等の入居者間交流や要支援者の見守りといった住民間の相互扶助機能を有するところは一部にとどまった。
これには、震災前の地域組織の形態が影響している。南三陸町では、住民が全員(全世帯)参加し、合議により活動内容を決めていく形の自治組織が、震災前は多くの地区で存在しなかった。一方で長い避難生活を送った仮設住宅では、交流機能を有する自治会が置かれ、入居者の孤立防止に一定の成果を挙げてきた。こういった経緯から、新しく作られた自治会について、最低限の機能を有した震災前の形態を望む住民と、相互扶助・助け合いまで活動範囲を広げる仮設住宅型を望む住民と、2つの考え方が今でも交錯している状況にある。
このような状況の中、本プロジェクトは入居者の意向を尊重しつつ、可能な限り豊かなコミュニティ活動を育むことができるよう、自治会の設立支援と、設立後の自治会への伴走支援を以下の通り実施した。
2.当初予定していた3団地(伊里前、戸倉、志津川東の東)に加えて、2017年度中に自治会が設立された2団地(志津川東の西、志津川中央)についても支援活動を行った。
伊里前、戸倉、志津川東の東の3団地については、自治会主催の行事や外部支援者による行事が一定程度行われるようになったため、それらの様子を「復興まちづくり通信」に掲載・情報発信する支援を継続して行った。通信は行事に欠席された方にも届け、参加を促した。冬季等に行事が少なくなる時期には、隣接する防災集団移転団地の方にも門戸を開いた交流会を当方主催で実施し、団地間の交流の拡大にも努めた。
志津川東の西、志津川中央の2団地については、戸数が多いこともあり自治会設立まで時間がかかった。自治会未成立の時期には、当方主催行事による住民間の交流を、自治会設立後は共催行事実施による自治会運営をそれぞれ支援し、自治会運営が軌道に乗るよう支援を継続した。
3.プロジェクト開始時、特に戸倉団地で大きな問題になると考えていた、復興公営住宅と隣接する防災集団移転団地との間のコミュニティの縦割り意識については、実施事業を通じた地道な働きかけや、両者を共に対象とした催事の開催を通じて、徐々に意識の変化があった。2018年度に入って、復興公営住宅自治会と防災集団移転団地自治会が共催する企画も出てきており、団地全体としてのコミュニティ形成が始まった感がある。
一方で、当初、うまく連携が取れていたと思われた志津川東の東団地で、復興公営住宅・防災集団移転団地双方を包含する高齢者クラブと、復興公営住宅自治会の関係が悪化してしまった。原因は集会所の経費負担の問題であった。当初きちんと取り決めをして始めていたとのことであったが、些細なことから関係が壊れてしまう脆さが見えた。
さらに、自治会ができれば、コミュニティの課題がすべて解決できるわけではない、ということも改めて見えてきた。そのような課題の1つ、町の中心部から離れた復興公営住宅で顕在化しはじめた、移動手段を持たない方の引きこもりの問題については、最終的には地域内の支えあい活動に移行することを目指しながら、当面は第3者による外出支援活動が必要と判断できた。このように既存の枠組みでは充足されていない住民ニーズに誰が対応していくのか、1つ1つ考えて、根気よく取り組んでいく必要がある。
広報誌 JOINT
Joint