助成対象詳細
Details
2014 研究助成 Research Grant Program [ A 共同研究助成 ]
相互扶助ファンドとイスラーム金融が創る新しい価値 ―ポスト資本主義をめざすコミュニティ経済哲学
New Value Propositions by Mutual-support Funds and Islamic Finance: A Community-based Economic Philosophy towards a Post-capitalist Society
New Value Propositions by Mutual-support Funds and Islamic Finance: A Community-based Economic Philosophy towards a Post-capitalist Society
企画書・概要
Abstract of Project Proposal
現在の日本では、伝統的な社会や家族が大きく変容し、弧居・弧死に代表されるようなコミュニティの衰退が問題となっている。本研究プロジェクトが対象とするイスラーム圏でも、急速な経済成長の弊害として、日本と同様にコミュニティの衰退が危惧され始めている。
そのような中、近年、イスラーム圏では、伝統的なイスラーム的価値観を現代的状況に対応する形で革新・再構築し、21世紀型の新たなコミュニティを創出する模索が始まっている。そこでは、イスラームの相互扶助の理念と、現代に登場してきたイスラーム金融の商業実践とが、絶妙なバランスを持って有機的に結びつく新しい動きが芽生えている。
本プロジェクトでは、そのようなイスラーム圏の先進的な試みの実態を調査し、その思想的基盤(新しい共生原理や社会経済哲学)がグローバルに提起している新しい価値観を、現地の当事者、研究者と日本の市民の交流の中から解明する。そして、日本のコミュニティ再生の取り組みに対して、従来とは異なる独創的な視角からアイデアを提供し、ポスト資本主義社会におけるより持続的で望ましいコミュニティを創り出す新たな地球的規模での連帯を促進することをめざしたい。
そのような中、近年、イスラーム圏では、伝統的なイスラーム的価値観を現代的状況に対応する形で革新・再構築し、21世紀型の新たなコミュニティを創出する模索が始まっている。そこでは、イスラームの相互扶助の理念と、現代に登場してきたイスラーム金融の商業実践とが、絶妙なバランスを持って有機的に結びつく新しい動きが芽生えている。
本プロジェクトでは、そのようなイスラーム圏の先進的な試みの実態を調査し、その思想的基盤(新しい共生原理や社会経済哲学)がグローバルに提起している新しい価値観を、現地の当事者、研究者と日本の市民の交流の中から解明する。そして、日本のコミュニティ再生の取り組みに対して、従来とは異なる独創的な視角からアイデアを提供し、ポスト資本主義社会におけるより持続的で望ましいコミュニティを創り出す新たな地球的規模での連帯を促進することをめざしたい。
Social and family ties in Japanese traditional communities have declined, evidence of which is the widespread isolation from the community and often lonely deaths. This research aims to find a way to solve this problem. Here, we propose a new value system to revive Japanese communities by focusing on pioneering practices to create a new type of community in the Islamic world.
The history of the Islamic world provides economic and social wisdom in accordance with the teaching of Islam, including promoting commerce and fair trade, as well as charity and support for the impoverished and socially vulnerable. The contemporary Islamic revival challenges market fundamentalism, and proposes a new economic and social philosophy with reconstructing and renovating abovementioned ideals.
This study will include field research of Islamic mutual-support funds and Islamic finance in Indonesia, Malaysia, and the Middle East. We will then clarify the Islamic principle of coexistence, the economic philosophy embedded in society to alleviate poverty and revive communities. The outcome of the research is expected to contribute to several grass roots activities initiated within Japanese civil society via civil dialogues between the Islamic world and Japan.
The history of the Islamic world provides economic and social wisdom in accordance with the teaching of Islam, including promoting commerce and fair trade, as well as charity and support for the impoverished and socially vulnerable. The contemporary Islamic revival challenges market fundamentalism, and proposes a new economic and social philosophy with reconstructing and renovating abovementioned ideals.
This study will include field research of Islamic mutual-support funds and Islamic finance in Indonesia, Malaysia, and the Middle East. We will then clarify the Islamic principle of coexistence, the economic philosophy embedded in society to alleviate poverty and revive communities. The outcome of the research is expected to contribute to several grass roots activities initiated within Japanese civil society via civil dialogues between the Islamic world and Japan.
実施報告書・概要
Summary of Final Report
(1)課題の所在
21世紀に入り、日本では地域コミュニティの衰退の問題が深刻化している。本研究プロジェクトの対象とするイスラーム圏でも、急速な経済成長の陰で、コミュニティの紐帯が弱まることが危惧され始めている。
そのような中、近年、イスラーム圏において、伝統的なイスラーム的価値観を現代的状況に対応する形で革新・再構築し、21世紀型の新たなコミュニティを創出する模索が始まっている。この取り組みの特色は、イスラームの相互扶助の理念と、この40年で急速な成長をとげているイスラーム金融の商業実践とが、絶妙なバランスを持って有機的に結びつく形で進められているという点である。このような結びつきによって、相互扶助を通したコミュニティ紐帯の維持・拡大が、イスラーム的富という経済基盤の上に持続的に成り立つようなしくみが新たに登場している。
この取り組みは、単にイスラーム的信仰の発露として実践されているのではなく、経済市場主義の弊害の是正や、持続可能な世界のための地球市民の連帯といったグローバルな課題に対して、新しい経済哲学や社会理念を提起することをも志向している。
(2)研究の目的
本研究プロジェクトは、このようなイスラーム圏で模索が始まっている21世紀型の新たなコミュニティを創出する先進的な取り組みに着目する。特に、東南アジアと中東諸国で脚光を浴びているイスラーム相互扶助ファンドとイスラーム金融の結びつきに注目し、それが持続的なコミュニティ紐帯の維持・拡大に寄与しているのかについて実態を解明する。
また、そのような結びつきを可能にするイスラームの価値観が、現代的状況に応じていかに革新・再構築されているのかについて、「イスラーム経済知の現代的位相」という視角から考察を行い、その新しい共生原理や社会経済哲学を明らかにする。
そして、この先進的取り組みがグローバルに提起している新しいコミュニティの価値観が何であるか、それが日本のコミュニティの再生に与える示唆とは何であるかについて、イスラーム圏の現地の当事者、研究者と日本のコミュニティ再生を担う市民の対話を生み出すきっかけ作りをめざす。
(3)研究の内容・結果
本研究プロジェクトでは、次の3つの柱を設定し、研究を進めた。
①イスラーム圏における現地調査(共同研究)
②現地の当事者、研究者を交えた国際ワークショップの開催
③研究成果の出版による社会還元
①については、東南アジアや中東、ヨーロッパでの現地調査を通して、イスラーム圏における21世紀型の新たなコミュニティを創出する取り組みを解明した。具体的な調査対象として、イスラーム相互扶助ファンドの代表的事例であるザカートとワクフという伝統的イスラーム経済制度を主に取り上げた。②については、研究代表者が所属する京都大学および共同研究者が所属する英国ダラム大学にて国際ワークショップを合計2回開催した。③については、本研究プログラムの最終成果として『学んで生かす!市民のためのイスラーム社会経済入門』というブックレットを刊行した。
本研究プログラムの実施によって、イスラーム圏における相互扶助ファンドを通した新たなコミュニティの創出の全容を解明しただけでなく、その実践が提起している「イスラーム経済知の現代的位相」にもとづく新しい共生原理や社会経済哲学が明らかとなった。それは、利己心と利他心が絶妙なバランスで両立する自律的な助け合いの精神(価値)である。これは政府やサードセクターの介入や支援を必要としないコミュニティの新たな水平的相互扶助システムの登場を予期させるものであり、日本におけるコミュニティ再生に役立つだけでなく、ポスト資本主義社会におけるより持続的で望ましいコミュニティを創り出す地球的規模での新たな連帯を形成するための新たな普遍的価値としても有望であろう。
21世紀に入り、日本では地域コミュニティの衰退の問題が深刻化している。本研究プロジェクトの対象とするイスラーム圏でも、急速な経済成長の陰で、コミュニティの紐帯が弱まることが危惧され始めている。
そのような中、近年、イスラーム圏において、伝統的なイスラーム的価値観を現代的状況に対応する形で革新・再構築し、21世紀型の新たなコミュニティを創出する模索が始まっている。この取り組みの特色は、イスラームの相互扶助の理念と、この40年で急速な成長をとげているイスラーム金融の商業実践とが、絶妙なバランスを持って有機的に結びつく形で進められているという点である。このような結びつきによって、相互扶助を通したコミュニティ紐帯の維持・拡大が、イスラーム的富という経済基盤の上に持続的に成り立つようなしくみが新たに登場している。
この取り組みは、単にイスラーム的信仰の発露として実践されているのではなく、経済市場主義の弊害の是正や、持続可能な世界のための地球市民の連帯といったグローバルな課題に対して、新しい経済哲学や社会理念を提起することをも志向している。
(2)研究の目的
本研究プロジェクトは、このようなイスラーム圏で模索が始まっている21世紀型の新たなコミュニティを創出する先進的な取り組みに着目する。特に、東南アジアと中東諸国で脚光を浴びているイスラーム相互扶助ファンドとイスラーム金融の結びつきに注目し、それが持続的なコミュニティ紐帯の維持・拡大に寄与しているのかについて実態を解明する。
また、そのような結びつきを可能にするイスラームの価値観が、現代的状況に応じていかに革新・再構築されているのかについて、「イスラーム経済知の現代的位相」という視角から考察を行い、その新しい共生原理や社会経済哲学を明らかにする。
そして、この先進的取り組みがグローバルに提起している新しいコミュニティの価値観が何であるか、それが日本のコミュニティの再生に与える示唆とは何であるかについて、イスラーム圏の現地の当事者、研究者と日本のコミュニティ再生を担う市民の対話を生み出すきっかけ作りをめざす。
(3)研究の内容・結果
本研究プロジェクトでは、次の3つの柱を設定し、研究を進めた。
①イスラーム圏における現地調査(共同研究)
②現地の当事者、研究者を交えた国際ワークショップの開催
③研究成果の出版による社会還元
①については、東南アジアや中東、ヨーロッパでの現地調査を通して、イスラーム圏における21世紀型の新たなコミュニティを創出する取り組みを解明した。具体的な調査対象として、イスラーム相互扶助ファンドの代表的事例であるザカートとワクフという伝統的イスラーム経済制度を主に取り上げた。②については、研究代表者が所属する京都大学および共同研究者が所属する英国ダラム大学にて国際ワークショップを合計2回開催した。③については、本研究プログラムの最終成果として『学んで生かす!市民のためのイスラーム社会経済入門』というブックレットを刊行した。
本研究プログラムの実施によって、イスラーム圏における相互扶助ファンドを通した新たなコミュニティの創出の全容を解明しただけでなく、その実践が提起している「イスラーム経済知の現代的位相」にもとづく新しい共生原理や社会経済哲学が明らかとなった。それは、利己心と利他心が絶妙なバランスで両立する自律的な助け合いの精神(価値)である。これは政府やサードセクターの介入や支援を必要としないコミュニティの新たな水平的相互扶助システムの登場を予期させるものであり、日本におけるコミュニティ再生に役立つだけでなく、ポスト資本主義社会におけるより持続的で望ましいコミュニティを創り出す地球的規模での新たな連帯を形成するための新たな普遍的価値としても有望であろう。
This research project focuses on the frontier practices of the community building in the Islamic world in the 21st century, especially, picks up the case studies of the collaboration of Islamic finance with Islamic mutual/charity funds in Southeast Asia and the Middle East, and aims to clarify the dynamics of the combination of traditional ideas on mutual assistance and the modern commercial practice of Islamic finance for the sustainable community building. Then, the case studies show that the new coexistence principle or socio-economic philosophy has been emerged in the Islamic world by enhancing the community building practices. Such a principle or philosophy can be explained as "a unique well-balanced spirit or value which coordinate pursuit of self-interest with altruism." This research project suggests that this unique well-balanced spirit or value can contribute not only to revitalize deteriorating communities in Japan but also dedicate to form the new solidarity for the next generation's sustainable global community in the post-capitalist era.
成果物
Projects Outputs
- 学んで生かす!市民のためのイスラーム社会経済入門(D14-R-0919)
プロジェクト情報
Project
プログラム名(Program)
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2014 研究助成 Research Grant Program
【A 共同研究助成
】
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助成番号(Grant Number)
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D14-R-0919
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題目(Project Title)
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相互扶助ファンドとイスラーム金融が創る新しい価値 ―ポスト資本主義をめざすコミュニティ経済哲学
New Value Propositions by Mutual-support Funds and Islamic Finance: A Community-based Economic Philosophy towards a Post-capitalist Society |
代表者名(Representative)
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長岡 慎介 / Shinsuke Nagaoka
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代表者所属(Organization)
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京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
Graduate School of Asian and African Area Studies, Kyoto University |
助成金額(Grant Amount)
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¥6,800,000
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リンク(Link)
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活動地域(Area)
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