助成対象詳細
Details
2014 研究助成 Research Grant Program [ A 共同研究助成 ]
持続可能な社会を創る「農の営み」を通じた新しい価値軸の提示とその普及に関する実証的研究 ―国内の農山村と都市における実態調査と比較検討を通じて
A Study to See Agricultural Activities as a New Reference Value for a Sustainable Society through a Fact-finding and Comparative Research in Rural and Urban Area in Japan
A Study to See Agricultural Activities as a New Reference Value for a Sustainable Society through a Fact-finding and Comparative Research in Rural and Urban Area in Japan
企画書・概要
Abstract of Project Proposal
本研究の目的は、農山村と都市の双方で営まれる「農の営み」に着目し、現代社会の持続可能性を実現する価値軸のシフトについて分析することである。
経済成長を志向する現代社会の生産活動は、有限な資源の収奪と大量廃棄による環境汚染によって成り立つ大量生産-大量消費を特徴としており、持続不可能であることが認識されている。また、貨幣的価値を第一義的な目的とする現代社会の労働は、貨幣収入の増大を目指してきたが、それは必ずしも幸福感や生活の満足感と結びついてない。これに対して近年、自然と共生し、自律的な暮らしを目指す「農の営み」の実践と共感が、世代を超えて少しずつ着実に広がっている。それは、「農の営み」が貨幣的価値だけではなく、非貨幣的な価値や公共的な価値を大切にする普遍的意義を含んでいると考えられるからである。
本研究では、農山村と都市で広がる多様な「農の営み」とそのサポートシステム(仕組みづくり)、「農の営み」を選択した人々の生き方に着目しながら、現代社会を持続可能な社会へとシフトする新しい価値軸について明らかにするとともに、それに基づいた今後のライフスタイルのあり方を内外に提示する。
経済成長を志向する現代社会の生産活動は、有限な資源の収奪と大量廃棄による環境汚染によって成り立つ大量生産-大量消費を特徴としており、持続不可能であることが認識されている。また、貨幣的価値を第一義的な目的とする現代社会の労働は、貨幣収入の増大を目指してきたが、それは必ずしも幸福感や生活の満足感と結びついてない。これに対して近年、自然と共生し、自律的な暮らしを目指す「農の営み」の実践と共感が、世代を超えて少しずつ着実に広がっている。それは、「農の営み」が貨幣的価値だけではなく、非貨幣的な価値や公共的な価値を大切にする普遍的意義を含んでいると考えられるからである。
本研究では、農山村と都市で広がる多様な「農の営み」とそのサポートシステム(仕組みづくり)、「農の営み」を選択した人々の生き方に着目しながら、現代社会を持続可能な社会へとシフトする新しい価値軸について明らかにするとともに、それに基づいた今後のライフスタイルのあり方を内外に提示する。
Our research, which will be carried out as a multi-disciplinary field study on rural and urban area, aims to analyze the nature and prospect of a value shift toward "agricultural activities " which may be the best means to realize a sustainable society.
What characterizes production of goods and services in contemporary society obsessed with economic growth is mass production and consumption based on a large scale of resource exploitation and environmental destruction. Today, it is widely recognized that such society is no longer sustainable. Furthermore, the work in contemporary society which gives top priority to money earning does not always lead to happiness or satisfaction of everyday life.
In the face of this phenomenon, "agricultural activities" are slowly, but constantly gaining supports in practices and empathy across generations for popular aspiration for more autonomous living in symbiosis with nature. Therefore "Agricultural activities" which are associated not only with a monetary value, but also with a non-monetary immeasurable and vivid value and commons may possess universal significance of what a more human civilization should be.
In the study, we will carefully analyze various "agricultural activities" that we see growing in rural and urban area across today's Japan. Its formal and informal supporting system as well as the motivation and background of those who have chosen to engage in the activity will be studied, and a new reference value that will enable contemporary society to shift from the growth-oriented one to the sustainable one will be made articulate. And vocabulary for new life style created with "agricultural activities" will be presented to contribute further local and international debates on the new reference value.
What characterizes production of goods and services in contemporary society obsessed with economic growth is mass production and consumption based on a large scale of resource exploitation and environmental destruction. Today, it is widely recognized that such society is no longer sustainable. Furthermore, the work in contemporary society which gives top priority to money earning does not always lead to happiness or satisfaction of everyday life.
In the face of this phenomenon, "agricultural activities" are slowly, but constantly gaining supports in practices and empathy across generations for popular aspiration for more autonomous living in symbiosis with nature. Therefore "Agricultural activities" which are associated not only with a monetary value, but also with a non-monetary immeasurable and vivid value and commons may possess universal significance of what a more human civilization should be.
In the study, we will carefully analyze various "agricultural activities" that we see growing in rural and urban area across today's Japan. Its formal and informal supporting system as well as the motivation and background of those who have chosen to engage in the activity will be studied, and a new reference value that will enable contemporary society to shift from the growth-oriented one to the sustainable one will be made articulate. And vocabulary for new life style created with "agricultural activities" will be presented to contribute further local and international debates on the new reference value.
実施報告書・概要
Summary of Final Report
社会の新たな価値とはどんな既存の価値と異なるのか?
本研究の課題は、農山村と都市の双方で営まれる「農の営み」に着目し、従来の経済成長優先の量的価値軸から社会の持続可能性に立脚した価値軸へのシフトが世代を超えて
なぜ、どのようにして生まれてきているのかを分析・考察し、社会の新たな価値を提示することにある。もっぱら経済成長を指向する現代社会は、グローバル市場の拡大と科学技術の発達により、大量生産-大量消費を可能にし、より速く、効率良く、便利な暮らしを実現できる条件を整えてきた。ところが、大量生産-大量消費にもとづく社会システムは、有限な資源の収奪による人間や国家同士の争い、大量廃棄による自然破壊、たえざる市場競争で広がる社会的・経済的格差や弱者差別を生んでいる。社会の新しい価値とは何よりもこれらの負の側面をなくそうとするものでなければならない。こうした現代社会の読み方から、本研究の基本的課題とは現代社会に支配的価値となってしまった経済ないし貨幣増殖中心価値をどう相対化して、より人間的な社会を可能にする価値を可視化してみるかという作業といってもいいだろう。
なぜ「農の営み」に注目したのか?
この問題提起から本研究が注目したのは「農の営み」である。近年、経済成長優先の社会システムへの依存度を減らし、自然と共生する「農の営み」を生き方として選択する動きが広がってきている。ここでは、貨幣的な価値だけではなく、非貨幣的な価値や公共的な価値を含んだ幅広い概念として「農」を捉え、あえて現金収入の増大のみを目的にする「産業型農業」とは区別している。またあえて「労働」とせず「営み」としたのも現代社会で大半を占める労働市場内における雇用ないし賃金労働と人間が自然や社会に対して働きかける行為そのものと区別するためである。
実証的(ファクト・ファインディング)プラス「巨大システムの中の人間」アプローチ
方法論としては大きく分けて二つのアプローチを併用した。一つはあらかじめ用意した問題項目に従い、農山村への居住者や新規移住者による「農の営み」内容に注目し、農のある暮らしの実践を詳細に分析する主として社会学的アプローチである。具体的には、「半農半X」(自給型農業を行いつつ、ほとほどの収入を目指すライフスタイル)や貨幣収入の最大化を優先しない「暮らし型農業」など多様な「農の営み」を選択した人々の収入・消費構造やビジネスモデル、また自治体や中央政府のサポートシステムなどを聞き取りや資料で考察する。もう一つは農村部と都市の双方で維持されてきた、あるいは新たに選択するに至った「農の営み」の現代的意味を巨大化した現代世界の仕組みの中の人間の在り方から問うという社会科学と哲学を組み合わせて分析・考察するというアプローチである。このアプローチの特徴は前者の農の社会学の知見を踏まえつつ、現行経済システムの相対化を可能にする、より人間的な新たな社会的価値の輪郭を可視化しようとする点である。
新たな価値を探る途上で見えてきた3つの参照軸
2年間の様々な地域の人々との交流・討論および様々な研究者や市民との研究会を通して当面3つぐらいにくくれられる新たな価値の参照軸が浮かび上がってきた。第1は絶えざる「市場競争」VS有機農業運動で顕著な「協力」という参照軸である。第2は大都会の人々の巨大化した制度の中での「無名化・無力化」VS地域自治による「顔の見える化」という参照軸である。第3は自ら段取りも成果物もわがものにできない雇用労働の「他律性」VS自ら段取りを決め自然との対話で成果物の自家消費、贈与、地域販売などを選び取る「自律性」という参照軸である。これらを手掛かりに国際的討論への参加、記録映像資料の作品化などにより外部に発信し、グローバル化社会の新たな価値軸を学問領域越境型で今後も探る予定である。
本研究の課題は、農山村と都市の双方で営まれる「農の営み」に着目し、従来の経済成長優先の量的価値軸から社会の持続可能性に立脚した価値軸へのシフトが世代を超えて
なぜ、どのようにして生まれてきているのかを分析・考察し、社会の新たな価値を提示することにある。もっぱら経済成長を指向する現代社会は、グローバル市場の拡大と科学技術の発達により、大量生産-大量消費を可能にし、より速く、効率良く、便利な暮らしを実現できる条件を整えてきた。ところが、大量生産-大量消費にもとづく社会システムは、有限な資源の収奪による人間や国家同士の争い、大量廃棄による自然破壊、たえざる市場競争で広がる社会的・経済的格差や弱者差別を生んでいる。社会の新しい価値とは何よりもこれらの負の側面をなくそうとするものでなければならない。こうした現代社会の読み方から、本研究の基本的課題とは現代社会に支配的価値となってしまった経済ないし貨幣増殖中心価値をどう相対化して、より人間的な社会を可能にする価値を可視化してみるかという作業といってもいいだろう。
なぜ「農の営み」に注目したのか?
この問題提起から本研究が注目したのは「農の営み」である。近年、経済成長優先の社会システムへの依存度を減らし、自然と共生する「農の営み」を生き方として選択する動きが広がってきている。ここでは、貨幣的な価値だけではなく、非貨幣的な価値や公共的な価値を含んだ幅広い概念として「農」を捉え、あえて現金収入の増大のみを目的にする「産業型農業」とは区別している。またあえて「労働」とせず「営み」としたのも現代社会で大半を占める労働市場内における雇用ないし賃金労働と人間が自然や社会に対して働きかける行為そのものと区別するためである。
実証的(ファクト・ファインディング)プラス「巨大システムの中の人間」アプローチ
方法論としては大きく分けて二つのアプローチを併用した。一つはあらかじめ用意した問題項目に従い、農山村への居住者や新規移住者による「農の営み」内容に注目し、農のある暮らしの実践を詳細に分析する主として社会学的アプローチである。具体的には、「半農半X」(自給型農業を行いつつ、ほとほどの収入を目指すライフスタイル)や貨幣収入の最大化を優先しない「暮らし型農業」など多様な「農の営み」を選択した人々の収入・消費構造やビジネスモデル、また自治体や中央政府のサポートシステムなどを聞き取りや資料で考察する。もう一つは農村部と都市の双方で維持されてきた、あるいは新たに選択するに至った「農の営み」の現代的意味を巨大化した現代世界の仕組みの中の人間の在り方から問うという社会科学と哲学を組み合わせて分析・考察するというアプローチである。このアプローチの特徴は前者の農の社会学の知見を踏まえつつ、現行経済システムの相対化を可能にする、より人間的な新たな社会的価値の輪郭を可視化しようとする点である。
新たな価値を探る途上で見えてきた3つの参照軸
2年間の様々な地域の人々との交流・討論および様々な研究者や市民との研究会を通して当面3つぐらいにくくれられる新たな価値の参照軸が浮かび上がってきた。第1は絶えざる「市場競争」VS有機農業運動で顕著な「協力」という参照軸である。第2は大都会の人々の巨大化した制度の中での「無名化・無力化」VS地域自治による「顔の見える化」という参照軸である。第3は自ら段取りも成果物もわがものにできない雇用労働の「他律性」VS自ら段取りを決め自然との対話で成果物の自家消費、贈与、地域販売などを選び取る「自律性」という参照軸である。これらを手掛かりに国際的討論への参加、記録映像資料の作品化などにより外部に発信し、グローバル化社会の新たな価値軸を学問領域越境型で今後も探る予定である。
イベント・レポート
Event Report
成果物
Projects Outputs
- 現代世界における「農の営みの根拠」(D14-R-0482)
広報誌 JOINT
Joint
プロジェクト情報
Project
プログラム名(Program)
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2014 研究助成 Research Grant Program
【A 共同研究助成
】
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助成番号(Grant Number)
|
D14-R-0482
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題目(Project Title)
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持続可能な社会を創る「農の営み」を通じた新しい価値軸の提示とその普及に関する実証的研究 ―国内の農山村と都市における実態調査と比較検討を通じて
A Study to See Agricultural Activities as a New Reference Value for a Sustainable Society through a Fact-finding and Comparative Research in Rural and Urban Area in Japan |
代表者名(Representative)
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勝俣 誠 / Makoto Katsumata
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代表者所属(Organization)
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早稲田大学大学院
Graduate School, Waseda University |
助成金額(Grant Amount)
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¥4,800,000
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リンク(Link)
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活動地域(Area)
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