助成対象詳細
Details
2014 研究助成 Research Grant Program [ B 個人研究助成 ]
中国農村部における自由で豊かな学校建築に関する研究 ―教育格差是正及び震災復興を目的として
A Study on Creative School Architecture in Rural Area of China: With the Aim of Closing the Gap of Education and the Post-earthquake Reconstruction
A Study on Creative School Architecture in Rural Area of China: With the Aim of Closing the Gap of Education and the Post-earthquake Reconstruction
企画書・概要
Abstract of Project Proposal
経済が急速に発展してきた中国社会では、貧富の差が拡大すると伴に、都市部と農村部の教育力・学校施設の格差も大きくなってきている。政策として30年ほど教育改革が行われてきたが、都市部の教育施設・空間の発展は長年停滞している。一方、農村部では、外部の建築設計者とNGOの協力の下、台湾の震災復興学校を参考にするなど都市部にはない自由な学校施設が多く見受けられる。そこで、本研究では中国の農村部の優れた学校事例及び台湾の震災復興で生まれた農村部の学校を対象とし、(1)プランニングの分析、(2)学校空間の構成形式及び利用実態の現地調査、(3)設計プロセス・背景・影響やプロジェクト立ち上げの経緯の調査、(4)創造的な教育空間の改善の提案を行う。これらは、都市部と農村部における教育格差の是正、多様性や創造性のある教育機会・空間の提供、画一的でない地域個有の文化・特徴・生業を取り入れ、震災復興の機会を活かした自由な学校の創造、震災復興の学校再建に関する知見の応用を目的とする。特に発展途上国での教育の機会均等や、日本を含めた災害が多く発生する地域や国における災害復興の学校再建へ寄与したい。
With the rapidly developing economy in China, the gap between the rich and the poor is becoming wider and wider. At the same time, the gap of education and school facilities between urban area and rural area is also widening. The reform of education has been carried out for about 30 years, but the development of the education facilities and space in urban area has stagnated for a long time. On the other hand, in rural area, with the outside help of architects and NGO, and inspired by school reconstruction of Taiwan's post-earthquake, many creative school facilities have been built, which are rare in urban area.
Therefore, the object of this research is the schools architecture in rural area of China and the schools of Taiwan's post-earthquake reconstruction. The research will include: (1) the analyses of schools' planning; (2) the field survey about the school spaces and their use conditions; (3) the survey about the process, background, influence of the school design; (4) the proposal about the improvement of the creative education space.
The purpose of this research are: (1) to close the gap of education between urban area and rural area; (2) to provide the education chance and space with diversity and creativeness; (3) to build schools with their local culture, features and lives after disaster; (4) to obtain the knowledge about school reconstruction of post-earthquake.
This research aims at providing the equal opportunity in developping countries' education and rebuilding schools in disaster recovery in the area or country like Japan in which disasters happen frequently.
Therefore, the object of this research is the schools architecture in rural area of China and the schools of Taiwan's post-earthquake reconstruction. The research will include: (1) the analyses of schools' planning; (2) the field survey about the school spaces and their use conditions; (3) the survey about the process, background, influence of the school design; (4) the proposal about the improvement of the creative education space.
The purpose of this research are: (1) to close the gap of education between urban area and rural area; (2) to provide the education chance and space with diversity and creativeness; (3) to build schools with their local culture, features and lives after disaster; (4) to obtain the knowledge about school reconstruction of post-earthquake.
This research aims at providing the equal opportunity in developping countries' education and rebuilding schools in disaster recovery in the area or country like Japan in which disasters happen frequently.
実施報告書・概要
Summary of Final Report
「プロジェクトの課題」
経済が急速に発展してきた中国社会では、貧富の差が拡大すると伴に、都市部と農村部の教育力・学校施設の格差も大きくなってきている。政策として30年ほど教育改革が行われてきたが、都市部の教育施設・空間の発展は長年停滞している。一方、農村部では、外部の建築設計者とNGOの協力の下、台湾の震災復興学校を参考にするなど都市部にはない自由な学校施設が多く見受けられる。
本研究では、中国の農村部における「希望学校」の建築計画の特徴を把握しながら、プロジェクトの計画・建設プロセス及び学校が現地の教育や地域社会に与えた影響を明らかにする。さらに、台湾の「ニューキャンパス運動」により建設された学校の利用特性、地域社会との繋がり、計画プロセスの特徴などを明らかにする。このことは都市と農村間の教育施設・教育の格差是正、震災復興などの学校再建に対する建築計画上の指針に繋がり、標準的計画からの脱却を目指そうとする今後の学校建築に示唆を与えると考えられる。また、多様な価値を持つ創造的な人材を育成するための新しい学校モデルを確立することが本プロジェクトの最大の目的である。
「プロジェクトの方法」
まず、31ヶ所の「希望学校」を抽出し、それらの分布、建設背景・年代について把握し、意匠・空間・地域との関係性などの視点から分析を行った。次に、計画・建設プロセスについて、13名の「希望学校」の建築設計者へのヒアリング調査を実施した。そして、14ヶ所の「希望学校」の利用実態に関する現地調査を行った。調査により、空間計画と教育プログラムとの関係、学校が農村部の教育に与える影響、学校と地域社会との連携、ユーザーの使用評価・要望及び課題を明らかにする。さらに、「希望学校」の再建において重要な参考事例となった台湾の「ニューキャンパス運動」による学校に対する現地調査を通して、空間の利用特性を分析する。また、教育関係者と建築設計者へのヒアリング調査を通して、空間的に良い点や変化した点や、学校と地域との連携現状を明らかにする。最後に、各地域の特徴や特色に焦点を合わせ、多様的かつ選択可能な教育プログラムモデル、及びこれらの教育プログラムの展開に適合する学校建築計画、計画・建設プロセスを提案する。
「プロジェクトの結果」
研究を通して、以下のことが明らかになった。1)震災後の地域復興のために、地域の生業・文化に関するカリキュラムや学校と地域の連携プログラムが創出され、また、これらの教育プログラムを実践できる空間計画も多く作られた。2)開放性・柔軟性のある教育空間が生徒の自主学習やグループ学習などを促進している。3)農村部での良い学校施設の創造が教育の質向上及び教育格差の是正に繋がっている。4)被災地の復興、農村部と都市部間の教育格差是正、地域の活性化、自主性・創造性を重視した教育改革における学校施設が担う役割及び学校と地域社会との連携は重要である。5)建築設計者が能動的に地域の社会・教育課題を発見・解決することは大切である。また、建築設計者が設計プロセスだけではなく、建設プロセスまで踏み込むこと及び、単なるハード面での建築の計画・建設ではなく、ソフト面での教育プログラムや地域との連携プログラムも積極的に提案するという建設プロセスへの関わり方は必要である。6)災害復興や教育格差是正などの地域が抱えた多様な課題の解決に貢献できる地元人材の育成という社会の新たな価値を創造するため、地域社会の活性化や地域固有の特徴・生業・文化の発展に繋がる次世代の新たな教育・学校モデルを構築することが必要である。
以上の研究結果は、博士学位論文「中国における素質教育のための学校建築計画に関する研究」の一部としてあげた。また、研究結果の一部は、アジア建築交流国際会議2016で報告され、日本建築学会計画系論文集及び中国の専門誌「住区」で発表された。
経済が急速に発展してきた中国社会では、貧富の差が拡大すると伴に、都市部と農村部の教育力・学校施設の格差も大きくなってきている。政策として30年ほど教育改革が行われてきたが、都市部の教育施設・空間の発展は長年停滞している。一方、農村部では、外部の建築設計者とNGOの協力の下、台湾の震災復興学校を参考にするなど都市部にはない自由な学校施設が多く見受けられる。
本研究では、中国の農村部における「希望学校」の建築計画の特徴を把握しながら、プロジェクトの計画・建設プロセス及び学校が現地の教育や地域社会に与えた影響を明らかにする。さらに、台湾の「ニューキャンパス運動」により建設された学校の利用特性、地域社会との繋がり、計画プロセスの特徴などを明らかにする。このことは都市と農村間の教育施設・教育の格差是正、震災復興などの学校再建に対する建築計画上の指針に繋がり、標準的計画からの脱却を目指そうとする今後の学校建築に示唆を与えると考えられる。また、多様な価値を持つ創造的な人材を育成するための新しい学校モデルを確立することが本プロジェクトの最大の目的である。
「プロジェクトの方法」
まず、31ヶ所の「希望学校」を抽出し、それらの分布、建設背景・年代について把握し、意匠・空間・地域との関係性などの視点から分析を行った。次に、計画・建設プロセスについて、13名の「希望学校」の建築設計者へのヒアリング調査を実施した。そして、14ヶ所の「希望学校」の利用実態に関する現地調査を行った。調査により、空間計画と教育プログラムとの関係、学校が農村部の教育に与える影響、学校と地域社会との連携、ユーザーの使用評価・要望及び課題を明らかにする。さらに、「希望学校」の再建において重要な参考事例となった台湾の「ニューキャンパス運動」による学校に対する現地調査を通して、空間の利用特性を分析する。また、教育関係者と建築設計者へのヒアリング調査を通して、空間的に良い点や変化した点や、学校と地域との連携現状を明らかにする。最後に、各地域の特徴や特色に焦点を合わせ、多様的かつ選択可能な教育プログラムモデル、及びこれらの教育プログラムの展開に適合する学校建築計画、計画・建設プロセスを提案する。
「プロジェクトの結果」
研究を通して、以下のことが明らかになった。1)震災後の地域復興のために、地域の生業・文化に関するカリキュラムや学校と地域の連携プログラムが創出され、また、これらの教育プログラムを実践できる空間計画も多く作られた。2)開放性・柔軟性のある教育空間が生徒の自主学習やグループ学習などを促進している。3)農村部での良い学校施設の創造が教育の質向上及び教育格差の是正に繋がっている。4)被災地の復興、農村部と都市部間の教育格差是正、地域の活性化、自主性・創造性を重視した教育改革における学校施設が担う役割及び学校と地域社会との連携は重要である。5)建築設計者が能動的に地域の社会・教育課題を発見・解決することは大切である。また、建築設計者が設計プロセスだけではなく、建設プロセスまで踏み込むこと及び、単なるハード面での建築の計画・建設ではなく、ソフト面での教育プログラムや地域との連携プログラムも積極的に提案するという建設プロセスへの関わり方は必要である。6)災害復興や教育格差是正などの地域が抱えた多様な課題の解決に貢献できる地元人材の育成という社会の新たな価値を創造するため、地域社会の活性化や地域固有の特徴・生業・文化の発展に繋がる次世代の新たな教育・学校モデルを構築することが必要である。
以上の研究結果は、博士学位論文「中国における素質教育のための学校建築計画に関する研究」の一部としてあげた。また、研究結果の一部は、アジア建築交流国際会議2016で報告され、日本建築学会計画系論文集及び中国の専門誌「住区」で発表された。
成果物
Projects Outputs
- 中国農村部における希望学校の計画・建設プロセス(D14-R-0139)
- 日訳:中国農村部における「希望学校」と地域社会との繋がりに関する研究(D14-R-0139)
- 日訳:中国農村部における自由で多様的な学校建築に関する考察研究—教育(D14-R-0139)
プロジェクト情報
Project
プログラム名(Program)
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2014 研究助成 Research Grant Program
【B 個人研究助成
】
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助成番号(Grant Number)
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D14-R-0139
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題目(Project Title)
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中国農村部における自由で豊かな学校建築に関する研究 ―教育格差是正及び震災復興を目的として
A Study on Creative School Architecture in Rural Area of China: With the Aim of Closing the Gap of Education and the Post-earthquake Reconstruction |
代表者名(Representative)
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範 懿 / Fan Yi
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代表者所属(Organization)
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九州大学大学院人間環境学研究院
Faculty of Human-Environment Studies, Kyushu University |
助成金額(Grant Amount)
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¥1,500,000
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リンク(Link)
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活動地域(Area)
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