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助成対象詳細

Details

2013 国内助成 「一般枠」 活動助成     

過疎の資産を宝に変える ―かんな若手定住促進計画

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

「かんな」地域は神流川を挟み、行政区が群馬県藤岡市鬼石と埼玉県神川町にまたがるが、住民感覚ではひとつの風土、文化圏でくくられる。このかんなの地もまた日本の典型的な過疎地域のひとつで、空き家、空き店舗、空き耕地が至る所で目に入る。しかし幸いこの地には、豊かな自然と、人と人とのつながりに価値を見出す若い人や、時間にゆとりを持ち、長く専門のキャリアを積んできた60代の人たちがいる。また、ほとんど利用される機会のない窯場、木工所、牧場など、魅力的な活動拠点も点在し、川と里山に囲まれた自然環境も特筆すべきものがある。
 そんな過疎地に価値を見出そうとする若手と、地域内外のベテランと女性たちが力を合わせ、これら過疎特有の資産を生かして、若い人たちにとって魅力のある地域づくりに取り組もうと立ち上がった。そこでこのかんなで空き家を活用して若手が始めた「アートレジデンシー」の活動をサポートしつつ、その新しい事業の担い手となる若手を育成するワークショップの開講を企画した。この企画は2年間にわたって実施し、3年経過後には定住した数名の若手によって、本格的に事業展開することを目標としている。

実施報告書・概要

Summary of Final Report

【プロジェクトの目的】
群馬県と埼玉県にまたがる神流川流域の小盆地「かんな」地域は、人口減少が続く典型的な過疎地だが、この地にアトリエを構える堀越千秋の影響を受け、2010年頃から若手のアーティストが出入りするようになった。本プロジェクトの代表は2012年からこの地で村新聞「神流風土子」を発行するようになり、副代表でアメリカ人アーティストのキール・ハーンは、2013年からアートレジデンシーを開始し、7カ国から14人のアーティストを集めていた。そして地域にはこれらの新しい活動に関心を示す人たちが現れ、彼らを中心に、アートで古民家を活用しようとするNPO「きぬやの会」が結成されていた。
こうした背景のもとで「かんな人材育成プロジェクト」がスタートした。アートレジデンシーに関わる人材を育成し、この地に何人かの若手が定住できる環境を整えようとする試みだ。

【実施内容と成果】
2014年度~15年度の2年間、アート、地域づくり、ゲストハウス、国際交流をキーワードとしたワークショップを各年44講座、開講した。参加者は周辺都市在住者が多く、14年度は延180人、15年度は延260人、またアートレジデンシーは14年度が14カ国20人、15年度は20カ国40人と、共に急増した。この二つのプログラムが相互に噛み合い、地域を巻き込みながら、人が人を呼ぶ方向に機能した。
また地元の有力紙、NHKなどマスコミも、節目節目で好意的に活動を報じてくれた。
そしてNPOきぬやの会のメンバーから、こうした活動をもっと広く知ってもらおうとの声が上がり、2年続けて9月末に「かんな秋のアート祭り」を開催し、それぞれ2千人を超える来場者を集めた。
本プロジェクトは地域の人にも広く理解されることとなり、特に若手が、自主ワークショップやワンコイン英会話教室を開いたり、来日アーティストとの交流に積極的に参加、支援してくれるようになった。また行政も、スタジオやレジデンス施設の整備工事、さらにアート祭りにも補助金を投じてくれた。
具体的な成果としては、事務局スタッフ1名が定住し、16年度のアートレジデンシースタッフとして働き始めた。ワークショップ参加者1名が藤岡市の「地域おこし協力隊」職員に採用され、観光協会とアートレジデンシーの担当となった。またこの間に、もちろん本プロジェクトの影響は間接的ではあるが、3組6名+1名の若手移住者があった。その他、地域づくりに興味を持っている男性、空き耕地で野菜づくりを始めた女性、古くからの特産の柚子ジャムやお茶づくりに関心を示している女性、観光型の馬牧場を構想している男性など、予備軍も数名現れてきた。
今後はこの2年間で得た人的財産を活かし、上記した若手の新しい活動の支援とNPOきぬやの会が進める旧造り酒屋跡地を活用した「かんなアートア活動センター」の運営によって、かんなの地域づくりをさらに進めていく。「いま動けば、まだ何とかなる。」それが、この2年間活動して得た実感である。
 

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2013 国内助成 「一般枠」 活動助成     
助成番号(Grant Number)
D13-L-0023
題目(Project Title)
過疎の資産を宝に変える ―かんな若手定住促進計画
代表者名(Representative)
佐山 吉孝  
代表者所属(Organization)
まちづくり研究所
助成金額(Grant Amount)
4,200,000
リンク(Link)
活動地域(Area)