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助成対象詳細

Details

2013 国内助成 東日本大震災特定課題     

復興・復旧経験地域視察研修会

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

2013年度に発足した「陸前高田市内仮設商店街連携会議」を、2014年度には商店街以外の個人事業者まで範囲を広げ「陸前高田市事業者連絡会」とし、これからの陸前高田市のまちづくりの根幹を担う事になる、市内の各事業者や商工会・市役所商工観光課や教育機関との今までに無い協力体制を構築し連携を深め、地域とともに賑わいを生み出す取り組みを図ります。
活動の目的は以下の4点について、災害から復興を経験・支援した団体からの情報共有と関係作りを図ります。
①中越地震の被害から復興に向けて取り組んでいる商店街
②中山間地地域で地域経営を目指して設立されたNPO
③地域の交流人口増のため活動する活動団体
④中越沖地震の被害から復興に向けて取り組んでいる商店街
復興支援団体の方に陸前高田に来訪頂き、事業者を含む地域の方々にこれまでの取り組みや経験を講演して頂きます。そして実際に過去の被災地である中越地方を訪問。復興状況を視察し、今後の陸前高田のまちづくりに生かすものです。
また2泊3日の小旅行のプログラムとしての意味合いも持たせ、市内事業者・行政間の関係作りのきっかけとします。

実施報告書・概要

Summary of Final Report

1.陸前高田の状況について

岩手県陸前高田市では東日本大震災により発生した大津波により、市の中心部が壊滅的な被害を被り、都市機能が完全に麻痺した。2015年で震災から5年目を迎えるにあたり、住民は仮設住宅から高台造成地への集団移転、もしくは公営住宅への転居を迫られている。また、仮設店舗で営業を再開した事業者は本設店舗への移行を迫られる時期になっている。そんな中、かさ上げ地に建設予定の中心市街地をどのようなものにするべきかというテーマで、陸前高田商工会主催のワークショップが開催されており、市民向け・事業者向けに分けて開催され、魅力あるまち、若い親世代や若者が楽しんで集まれるまちとはどのようなものであるのかを市民から聞き取り、まちづくりに反映させていく動きが出てきた。しかし、単発の会議では意見を集約することはできないため、合意形成のために継続して意見を取り入れる機会を設け、実際に施政に反映させていく必要がある。


2.訪問学習での学び―新潟県小千谷市での民間組織の取り組み

新潟県小千谷市東小千谷地区では中越大震災の影響により、当時地区で唯一であり駅前の集客の要であったスーパーマーケットが撤退し、地域住民は最低限必要な日用品の購入手段を失った。この状況を受け、地域の2つの商店街が組合を発足。住民の生活利便性確保を目指し、先進事例の視察や住民アンケートの実施を行った。検討結果から、まちづくりの実現のためには地域住民の指示と総意に基づく住民運動として活動していくことが不可欠であると判断し、平成19年に事業者と地域住民の協議会「東小千谷夢あふれるまちづくり活性化協議会」(以下、東夢協)として再発足するに至る。平成20年には新組織により市民ワーキング委員によるワークショップを実施し、事業の具体的な検討に入る。さらに平成21年度からは、ワークショップで検討されたまちづくり事業を実行に移すため、事業実施に向けた活動が本格的に動き出した。

中越大震災後の住民アンケートの実施結果から、地域の総意としての生活利便性の向上、ライフスタイルを充足する施設”よりどころ”の整備、高齢者向け移動支援の必要性が示され、東夢協として取り組み可能なものを集約し、4つのテーマとして掲げた。

東夢協はこれまで(1)食生活の充足を実現する、(2)高齢者や子どもの拠り所を確保する、(3)交通手段の確保、(4)地域の元気を応援する、の4つテーマで実行委員会を発足、基本目標として掲げる「便利で住みやすく安全な街づくり」の実現のために現在も継続して活動している。


中越大震災から10年目となる平成26年10月、再度住民アンケートを実施し、これまでの東夢協の活動の評価と、現在の住環境についての不安点などの洗い出しを行った。活動テーマごとに達成度は様々だが、概ね住民満足度は高いという結果を伺っている。今後のまちづくりの担い手として、小千谷市の中心地域だけが盛り上がるのではなく、周辺地域の関心も高めていくことが大切であり、地域住民のまちづくりに向けての意識を高めるための講演会、討論会の開催も必要との声が出ている。また、高齢者を支える20代・30代の人がこのまちをどうしていきたいと思っているのか、若者の自由な発想を受け入れる体制が必要であり、活動の中心を担ってもらうべきという意見も上がっている。


3.小千谷市での取り組みの応用について

中越大震災と東日本大震災は、状況・規模が違うため単純に比較することは難しいが、住民目線であれば参考になる部分は多々ある。事業者と利用者の年齢に関係なく、常に市民の意見を反映できる自治体の受け入れ態勢と、住民主体で話し合いを継続することが求められる。小千谷市の場合も、最初はまちづくりに対して積極的でなかった住民の方も周囲の雰囲気を感じ取り、徐々に参加意欲が増していったことから、自治体は住民の必要を伺い、対応ができる範囲で真摯に応えることが信頼の獲得に繋がる。他の地域の成功事例をそのまま真似するのではなく、各地の特色を生かしたものを提示し他の地域との差別化を図ることが重要。単純に綺麗な「まちなみ」が交流人口増加に繋がるものではなく、逆に維持管理のためのコストが地区の財政圧迫につながり、本末転倒な結果をもたらすことも今回の訪問で学んだ。

当然のことながら、各事業者の企業努力は欠かせない。より多くのお客様に満足していただけるような取り組みをし続けなければならず、中心市街地だけが盛り上がるのではなく、周辺地域(かさ上げ地以外)の関心も高めていくことが大切。同じ風土、文化、生活環境を共にする方々が知恵を出し合い、他人まかせにせず自分のまちに誇りと責任を持つことが、まちづくりを次世代に繋げていく鍵になっている。

小千谷市東夢協が検証を繰り返し行っているように、「まち」は一度作って終わりではなく評価・検証・改善を繰り返すべき。成果の検証と改善点の洗い出しを絶えず継続し、より良いまちの姿を求め続けることが重要。これらの積み重ねが楽しく暮らせるまち、魅力あるまちが形成されていくということに繋がる。


4.高田大隅つどいの丘商店街の今後の取り組み

新しい市街地を核とした「活力あふれるまちづくり」の実現に向けては、多様な事業者が一カ所に集う利便性の高さ、他にない魅力ある構成とすることが重要。多くの事業者がかさ上げ地に出店を希望する反面、様々な状況が地域にはあり、想定されていた中心市街地が構想通りに実現されるのかが懸念されている。他に類を見ない大規模な区画整理事業による新市街地が歯抜け、閑散としたまちになるのではとの懸念も持たれており、これを払拭するためにも、多くの事業者が出店できる環境整備と、関係各所との調整を担う存在が必要と捉えている。そこで、2015年度の商店街の取り組みとして高田大隅つどいの丘商店街を中心に、仮設商店街関係者による商店街連携会議や共同企画の実施等、市内の事業者同士の交流の機会を継続して設ける。交流を続ける中で、今後の意向調査や商店街コミュニティの組織化に繋げていければと考えている。 本格復興期とされている本年度、草の根レベルでのより具体的な活動が求められている。


(了)

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2013 国内助成 東日本大震災特定課題     
助成番号(Grant Number)
D13-E-0049
題目(Project Title)
復興・復旧経験地域視察研修会
代表者名(Representative)
村上安人  
代表者所属(Organization)
高田大隅つどいの丘商店街
助成金額(Grant Amount)
1,500,000
リンク(Link)
活動地域(Area)