助成対象詳細
Details
企画書・概要
Abstract of Project Proposal
1 現地調査したい内容
人口流失の状況と背景,土地かさ上げの影響,高い防潮堤の影響、施設整備の生態系への影響,観光業の状況,商業・加工業の状況,医療・福祉,介護の状況,教育の状況等
2 現地調査スケジュール
(奥尻島)
1日目 北海道庁
2日目 奥尻町役場,社会福祉協議会,漁協等
3日目 奥尻町観光協会,
4日目 島内踏査
(玄界島)
1日目 網地島-仙台-福岡の移動
2日目 玄界島行政区長等への訪問
3日目 福岡市訪問
4日目 福岡-仙台-網地島の移動
実施報告書・概要
Summary of Final Report
1.復興まちづくりの課題と問題意識
奥尻島は津波被害を受け、玄界島は地震被害を受け,ハード面での復興は終わったが、人口流失が続いている。網地島でも同様の事態が待ち受けており,それをどう打開していくかを学びたい。また,人口流失の現状,高い防潮堤の影響、観光の現状等の課題を学びたい。
2.訪問学習の実施概要 (奥尻島、玄界島)
(1) 奥尻島に関するスケジュール
7月10日(木) 北海道庁への聴聞
7月11日(金) 奥尻島調査及び奥尻町役場への聴聞
7月12日(土) 奥尻島調査
7月13日(日) モエレ沼公園(人口の築山を使った公園)調査
(2)奥尻島での気づき
集団高台移転はわずかで,土地をかさ上げし,区画されたところに新しい町が作られた。奥尻島は,全国から集まった義援金により,街はきれいによみがえったが,空き店舗が目立ち,活気が失われていた。人口減少による影響もあるが,震災後の大型店舗の進出も大きな影響を与えていた。
(3)玄界島に関するスケジュール
9月13日(土) 網地島-仙台-福岡の移動
9月14日(日) 玄界島行政区長等への訪問,NHK福岡放送局の取材
9月15日(月) 福岡-仙台-網地島の移動
(4)玄界島での気づき
第一印象は,きれいに区画された土地に,最新のきれいな家が建ち並んでいて,島ではないようだ。地中海の海辺にある街のようだった。「ガンギ」の階段が,街づくりのモチーフで,よい雰囲気を出していた。計画の実現によって,人々の生活が一変。以前の人が歩けるくらいの道が,5mに広がることによって,自動車が使えるようになり,高齢者用の電動カートが使えるようになった。高齢者にとって,住みよい島になった。
3.今後の復興まちづくりに対する応用
(1)風化する記憶の怖さ
奥尻島の津波の悲惨な記憶は,21年経って,多くの方の記憶から消えようとしていることに,衝撃を受けた。津波被害を受け,高床式になった青苗小学校では,7月12日に避難訓練が行われていた。子どもたちが自らの命を守れるように,避難訓練等を継続的に実施していく大人たちの努力の大切さを学んだ。震災遺構として,古い倉庫が残されていたが,津波の恐ろしさを伝えるようなものではなかった。記憶の伝承ではなく,記録の伝承が必要である。
(2)計画策定の重要性
奥尻島の防潮堤は,海に張り出しすぎて,浅瀬の磯場がなくなり,生物の成長に大きな影響を与えていた。防潮堤の背後で盛り土をしていないところは,海が見えず,漁師や住民に,不便や不安を感じさせている。青苗地区では,防潮堤の高さまで盛り土されため,海への眺望も良く,防潮堤の圧迫感は感じられない。巨大な防潮堤は,傷みが目立ってきた。修繕も追いついていない。計画の際には,この点もきちんと考慮しなければならない。避難路は,高齢により,急な坂道を登れる人が少なくなってきている。補修の必要な箇所も増えてきている。
(3)玄界島のように,計画の出来不出来が,住む方の生活を決定するようになる。計画策定には,住民の意見を取り入れように,十分な議論を重ねる必要がある。公営住宅のエレベーターが,一般住宅に住む住民も使用することが許されており,急傾斜の上がり下がりの負担を減らしている。柔軟な対応により,住民の生活が便利になった。国の補助制度の中でも,工夫することができた良い例だと思った。被災前の石積みが残されていたのが,とても印象に残った。街の記憶は,新しい街になっても残しておきたい。
4.人口減少に対処する地域づくり観光の大切さ
人口が減る中で,地域を維持していくため,地域づくり観光に力を入れて,交流人口を増やしていく必要がある。
(了)